寒々とした雪一色の景色。シーンと静まりかえった雰囲気が北欧を感じさせます。言葉で人物像や背景の説明は一切ありません。ちょっとした会話や雰囲気で背景などを想像させて映画を観させるあたり、映画の力を感じてうれしくなります。 真冬のストックホルム。冬の陰鬱な毎日の中で行われるオスカーへのイジメ。離婚しているらしいオスカーの両親。孤独を抱えたオスカーはエリと出会います。そしてイジメられている事実を初めて打ち明けた相手がエリです。エリとの関係の中で、どことなくひ弱だったオスカーが強く変わろうとするところは青春作品のようです。しかし、エリの励ましはオスカーをイジメから救うためだけのものでしょうか?そう言う言葉の裏にある「怖さ」を感じさせる作品です。 一方エリは、父親とふたり暮らし。この町に引越ししてきます。しかし映画を観ていくと、この男は父親なの?と言う疑問を持たせる表現をします。しかしこれも映画では何の説明もありません。入院している男の元にエリが行ったとき、自分の身をエリに捧げるシーンにはグッとこみ上げるものを感じました。 このような愛を感じさせる人間社会と、ヴァンパイアであるエリの現実。 エリは父親らしき男のように、庇護されて暮らしていくしかないヴァンパイアなのです。それ故にエリがオスカーに(イジメた相手をやり返すのよ)と助言した言葉の本当の意味は?と映画を見終わったあとに考え、エリの打算?とフッと思った瞬間、背筋がゾクッとしました。 日本ではヴァンパイア伝説は一般的でありません。なのでヴァンパイア伝説に基づくエピソードは理解しきれないものもあります。たとえば、映画の英語題である「Let the right one in」ですが、直訳すると「受け入れて」と言う意味になります。これはオスカーの家にエリを入れる、入れないのシーンで使われた言葉です。このシーンでのエリの反応はヴァンパイア伝説によるもののようです。 男、女、それがヴァンパイアであっても純粋に愛すると言う純愛作品にも取れるし、庇護者を持たなければ生きていけないヴァンパイアのしたたかさにオスカーがハマっていく様を描いた作品と言えばそうも取れます。何とも奥の深い作品だと思いました。 ぜひ原作を読んでみたいです。 この映画は早速ハリウッドで「モールス」と言う作品でリメイクされました。そちらを見ていないので、比べることはできませんが、見るまでもなくオリジナルを超えることはないのでは?と思わせるクオリティーを持った作品でした。 興味を持たれたらぜひ観て下さい。そして感想を聞かせて下さい。